協会誌最新号Vol.40/ No.1 (通巻137号)
特集「挑戦への第一歩〜パラスポーツで叶える自分の可能性〜」

挑戦への第一歩 〜パラスポーツで叶える自分の可能性〜

表紙データ(PDFファイル)

特集にあたって「挑戦への第一歩〜パラスポーツで叶える自分の可能性〜」
冨田藍
この特集では、パラスポーツに関わる当事者や支援者がどこでパラスポーツと出会い、どのような挑戦と喜びを得たのか、彼らの体験や経験を述べて頂く。また、パラスポーツを知ってもらう取り組みや、当事者と支援者の協力の重要性を述べていただき、これまでパラスポーツに興味を持っていなかった方も、関わるきっかけを提供したいと思う。

特集 パラスポーツの現状と課題
藤田紀昭
この特集では、日本のパラスポーツの現状と課題についての報告である。パリパラリンピックでは日本がメダル41個を獲得し、ランキング10位であった。しかし現在、競技団体の資金不足が深刻な問題とされ、障害者のスポーツ参加率は上昇傾向も、健常者との差が依然大きい。選手強化には適切な環境整備が必要でありスポーツ継続のための情報提供とアクセス改善が重要である。政策や支援策の強化が求められ、スポーツの楽しさを体験できる環境整備が課題と述べられている。

特集 パラスポーツへ関わるきっかけと支援の実際
杉山真理
この特集では、パラスポーツの支援と普及に関する報告である。パラスポーツの特徴としてはルール変更、道具の工夫、クラス分けが競技の公平性を確保する要素である。よって全国障害者スポーツ大会の障害区分が競技参加の基盤となっている。さらに、スポーツ庁の振興方策により、地域における支援体制の強化も推進されユニバーサルスポーツクラブの活動は多様な人々が共にスポーツを楽しみ、 健康促進や社会的つながりの形成を目指す取り組みを実践し障がいの有無を超えて共生社会の実現に向けた具体的なモデルケースであると述べている。

特集 パリ2024パラリンピック競技大会での視覚障害のある医師の活動報告
根本玲
この特集では、パリ2024パラリンピックに帯同した聴覚障害のある医師の活動報告である。業務内容はパラ陸上競技の医療支援、アンチ・ドーピング対策、選手の健康管理が主である。大会中、聴覚障害者に対して大会関係者や選手、スタッフは初対面でも自然に手話や筆談、 音声認識を活用し、コミュニケーションをしっかり取る姿勢が印象的でこのような環境で医務活動を行えたことは理想的なインクルーシブ社会の一例であったと報告し、今後の支援体制の発展が課題であると述べられている。

特集 スポーツへの挑戦
青木颯志
この特集では、筆者の車いすスポーツへの挑戦と成長の記録をまとめている。幼少期はスポーツに関心がなく、車いす生活後もインドア派。しかし、ツインバスケットボールとの出会いが転機となった。中学・高校での体育の困難さを経験したことが競技への意欲を向上させ車いすラグビーにも挑戦し、日本代表強化選手に選出された。クラス分けの変更による壁を乗り越え、成長を実感するこができたとのこと。大学でも環境を活かし競技力向上を目指し、選手としてだけでなくチームスタッフやファン、 ボランティアなど様々な方面からも魅力を感じてもらうために普及活動や競技活動を通して、競技の発展に貢献していきたいと述べられている。

特集 地域でパラアスリートを支える挑戦の紹介
後藤賢二
この特集では、地域におけるパラアスリート支援の重要性と取り組みを紹介している。日本版FTEMを基に選手の育成プロセスを解説し、和歌山県立医科大学のスポーツ医科学支援の取り組みを説明している。パラアスリートサポート事業の柱はサポート事例の収集とサポートマニュアルの作成、関係機関との連携である。専門スタッフによる測定・指導を通じた選手支援の仕組みを提示し、パラスポーツ指導者の育成と地域での支援体制構築が必要であり、持続可能なパラスポーツ支援の確立が課題であると述べられている。

特集 障害の有無に関わらず子ども達が運動を始めるきっかけ作り
藤原清香
この特集では、障害のある子どもたちのスポーツ参加を支援する取り組みの報告している。義肢の支給制度の課題と解決策を提示し、運動用義肢の開発と活用が子どもの成長と自己肯定感の向上に寄与していると述べている。欧米の先進事例を参考に、日本での支援体制の整備を推進し、学校体育での参加機会の拡大は重要である。義手を活用した運動指導が必要であり障害の有無に関わらず、挑戦できる環境の整備が課題であるため、今後の普及活動と支援体制の確立が目標である。

特集 パラスポーツの道具(特に車椅子ユーザーのスポーツについて)
沖川悦三
この特集では、パラスポーツ用具の進化と開発の面白さを論じた内容である。スポーツ用車椅子の改良と性能向上の過程を紹介し、チェアスキーの開発における試行錯誤と改良の歴史を解説している。選手の技術向上と用具の発展は相互に作用するため重要性である。さらに車椅子ユーザーはスポーツを通じて新たな体験を得る可能性もある。これらのことからパラスポーツ用具開発の魅力が伝わり興味を持ってもらうためのきっかけになれば幸いである。

特集 様々な場面で用いられるスポーツ用義肢装具
沖野敦郎
この特集では、スポーツ用義肢装具の進化と活用について報告している。パラスポーツは障害者スポーツと同義語で用いれる場合もあるが、健常者でも装具を使用してスポーツを行う場面がある。そこで、様々な義肢装具について実例をもとに紹介する。さらに、競技用義足の特性とクラス分けの影響についてや走幅跳び、走高跳びにおける義足の活用とルールの変遷を考察している。義手の競技特化型設計の意義、相撲やフェンシング、スキージャンプなどの競技用装具の開発事例を紹介し、装具に関しては隠して使用している場合があるため、 中々目にすることができないが、 実際は多くの選手が使用しているので、 今後はそのような観点からスポーツ観戦してみるのも一興ではないかと述べられている。

特集

特集にあたって 「挑戦への第一歩 〜パラスポーツで叶える自分の可能性〜」(P1)
  • 冨田 藍
  • J-STAGE
特集 パラスポーツの現状と課題(P2)
  • 藤田 紀昭
  • J-STAGE
特集 パラスポーツへ関わるきっかけと支援の実際(P9)
  • 杉山 真理
  • J-STAGE
特集 パリ2024パラリンピック競技大会での聴覚障害のある医師の活動報告(P13)
  • 根本 玲
  • J-STAGE
特集 スポーツへの挑戦(P17)
  • 青木 颯志
  • J-STAGE
特集 地域でパラアスリートを支える挑戦の紹介(P20)
  • 後藤 賢二
  • J-STAGE
特集 障害の有無に関わらず子ども達が運動を始めるきっかけ作り(P25)
  • 藤原 清香、 野口 智子、 柴田 晃希、 大西 謙吾、 立松 佳通、 長野 洋
  • J-STAGE
特集 パラスポーツの道具(特に車椅子ユーザのスポーツについて)(P30)
  • 沖川 悦三
  • J-STAGE
特集 様々な場面で用いられるスポーツ用義肢装具(P33)
  • 沖野 敦郎
  • J-STAGE

研究論文

研究論文 歩行車歩行における骨盤支援制御の呈示力波形の導出とシミュレーション(P38)
  • 青山 宏樹、 堤 大治朗、 小川 勝史、 鄭 聖熹
  • J-STAGE
研究論文 脳卒中片麻痺による下肢装具使用者を対象とした  装具および装具提供サービスに関するニーズ評価項目の検討(P47)
  • 佐藤 健斗、 三富 菜々、 春名 弘一、 昆 恵介、 小林 大二
  • J-STAGE
研究論文 福祉用具専門相談員が行っている末期がん患者への療養環境整備に関する研究 ―終末期各期の福祉用具の選定と活用に焦点をあてて―(P57)
  • 若林 和枝、 東畠 弘子
  • J-STAGE

連載

連載 「リハビリテーション・エンジニアリング」研究について想うこと@(P66)
  • 山鹿 隆義
  • J-STAGE
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報告 第38回リハ工学カンファレンスin東海に参加して(P67)
  • 小嶋 紅葉
  • 報告
報告 SIG姿勢保持講習会2024に参加して(P68)
  • 三浦 亘貴
  • 報告
報告 第27回日本福祉のまちづくり学会全国大会に参加して(P69)
  • 杉田 真
  • 報告
報告 Kids Loco Project International Meeting 2024(P70)
  • 高塩 純一、 安田 寿彦
  • 報告
報告 みんなで考えよう 災害対策 ―要援護者の防災・減災― に参加して(P72)
  • 荒井 創
  • 報告
報告 書評・芸術評 「人間工学からの発想」クオリティ・ライフの探求(P73)
  • 佐藤 昭則
  • 報告
J-stageリハビリテーション・エンジニアリング誌