協会誌最新号Vol.39/ No.2 (通巻134号)
特集「リハビリテーション領域における ウェアラブル・ノンウェアラブルデバイスの活用」
特集にあたって 「リハビリテーション領域におけるウェアラブル・ノンウェアラブルデバイスの活用」 山本 達也
リハビリテーション領域におけるウェアラブルデバイスとノンウェアラブルデバイスの活用は、近年急速に発展している。デバイスの進歩に伴い、これまで数値化が難しかった情報が可視化できるようになり、それらがセラピスト、当事者、家族を含むすべての関係者にプラスになることが期待されている。今回の特集では、ウェアラブルデバイス・ノンウェアラブルデバイスの紹介や活用方法、開発とその可能性について多角的に探究する。
リハビリテーションにおける睡眠測定ウェアラブルデバイスの活用 川島 幸太郎、 中村 諒太、 山口 智史
ウェアラブルデバイスの発展により、睡眠活動を含む様々な活動データの取得が容易になった。本稿では、睡眠活動計測が可能なウェアラブルデバイスを紹介し、睡眠活動がリハビリテーションに与える影響について最新の知見を概説する。従来のリハビリテーションでは睡眠活動の評価が十分でなかったが、睡眠の質は日中の身体活動や運動学習に大きな影響を与える。したがって、リハビリテーションの効果を最大化するには、ウェアラブルデバイスを用いた睡眠活動の精確な評価とアプローチが不可欠である。本稿では、リハビリテーション分野における睡眠活動計測の新たな可能性を探る。
睡眠センサ<非装着型> 木暮 貴政
ヘルスケアを目的としたウェアラブルデバイスの普及が目覚ましい一方、非装着型睡眠センサが日本の医療介護領域で普及してきている。本稿ではマットレスの下に設置するベッド設置型睡眠センサについて紹介する。ベッド型睡眠センサでは睡眠・覚醒に加えて離床の情報を得ることができるとともに、睡眠測定に伴う負担が少ないので、月単位や年
単位の測定も容易になると考えられる。医療介護施設での普及とともに研究成果のさら
なる蓄積が期待される。
ウェアラブル・ノンウェアラブルデバイスを活用した生活リズム評価とその応用 久米 裕
ウェアラブル・ノンウェアラブルデバイスの臨床応用は計測用デバイス運用、計測データ管理および対象者への結果フィードバックという点から有用であると筆者は考えている。そして、これらのデバイスを活用した生活リズム評価は、インターネット接続されているスマートフォンやタブレット端末と併用することによって、研究者・臨床家および対象者の双方に対して有益なツールとなることが今後期待される。本稿では、ウェアラブルデバイスを用いた生活リズム評価の実際とウェアラブル・ノンウェアラブルデバイスを活用した生活リズム評価とその応用について述べる。
介護施設のICT化の取り組みについて 小川 誠
少子高齢化により、あらゆる医療介護サービスの需要が増大する一方で、人材不足が深刻化している。介護業界では、@介護人材不足、A介護作業負担増大、B介護レベル低下が経営課題となっている。その解決策として、介護テクノロジーの導入やICT化が進められ、作業負担を軽減し、高齢者と直接関わる介護作業に余裕を持って対応することで、介護現場全体の生産性向上を目指している。本稿では、介護現場におけるICT化を通した可視化や異常検出・通知システム、データ活用方法についての取り組みを述べるとともに、介護テクノロジーの課題と限界について考察する。
睡眠センサー導入の取り組み 澤ア 勇次
介護現場では、高齢化や認知症の進行により対応が難しい利用者が増加し、職員の負担重度化や人材不足が課題となっている。老人保健施設「リハビリセンターあゆみ」では、ICT機器の導入を進めている。本稿では、当施設で導入している「眠りSCAN」および「シルエット見守りセンサ」の導入事例と活用について述べるとともに、「リハビリセンターあゆみ」における具体的な取り組みについて紹介する。そして、介護現場におけるICT導入の課題と展望について述べていく。
空間認知課題に対する自立的移動支援方法について 〜LOOVIC の開発に至ったきっかけとその取組み〜 山中 享
「歩く」という人間の基本動作は、社会的・生理的欲求を満たすための移動手段である。移動の先に見えている情報量は、個人の欲求の強さにより異なる。空間認知の影響や能力、苦手・特異な範囲は個人によって異なるが、できる限り共通したアプローチ方法での解決が望まれる。本稿では、空間認知に問題を抱える対象者への移動支援テクノロジーである「LOOVIC」について、開発に至ったきっかけと取り組みを紹介するとともに、今後の展望について述べていく。
膀胱センサー 小島 みさお
日本の高齢化率は29.0%に達し、障害者の高齢化も進行している。内閣府の調査(2013)では、在宅介護において介護者が最も苦労する内容として排泄(排泄時の付き添いやおむつの交換)が最上位に挙げられている。しかし、排泄介護の負担軽減や排泄自立のための機器類は十分とは言えない現状にある。本稿では、排泄トラブルの「予防」「治療」「対処(ケア)」の重要性を伝える協会認定資格であるコンチネンスアドバイザーである筆者の立場から、排泄に関連するセンサー、特に膀胱センサーを紹介するとともに、排尿自立支援に関する制度の動向や今後の展望について考察する。