協会誌最新号Vol.37/ No.1 (通巻125号)
特集「10年後に向けて、脊髄損傷の再生治療とリハビリテーションの取り組み」
「10年後に向けて、脊髄損傷の再生治療とリハビリテーションの取り組み」 安藤 信哉
「10年後の再生治療やリハビリテーションの世界は一体どのようになっているのか、それを知る手がかりを得るために、様々な分野の方々から執筆をして頂きました。2030年以降の未来はどのようになっているのでしょうか。これからの再生治療とリハビリテーションについて考えていく1つの視座になればと考えています。」
「iPS細胞を用いた脊髄損傷に対する再生医療とリハビリテーションの重要性」 名越 慈人、岡野 栄之、中村 雅也
「既に、亜急性期脊髄損傷患者に対する細胞移植が始まる段階であり、長年のエビデンスの蓄積がようやく再生医療への第一歩を踏み出そうとしている17)。またそれと同時に、われわれは次世代の細胞移植を見据え、より効果的な治療開発を目指して基礎研究にも取り組んでいる。その一方で多くの患者を救うためには、慢性期における治療法の確立も重要な課題である。」
「10年後に向けて、脊髄損傷の再生医療とリハビリテーションの取り組み−脊髄再生医療リハビリテーションの現在と未来−」 緒方 徹
脊髄損傷の再生医療に関連する1)細胞治療(いわゆる再生医療そのもの)、2)ロボットリハビリテーション、3)評価手法、4)データサイエンス、の各項目についてこれまでの経緯と今後の展望について紹介しながら、その中心として進む臨床での再生医療の実践についての現状とこれからを概説していく。
「社会復帰に向けた再生医療後のリハビリテーション医療−リハビリテーション医療現場で今できる準備−」 古澤 一成、コ弘 昭博
「再生医療というと、組織や細胞レベルに焦点が当てられがちであるが、リハビリ医療が参加することは、単なる運動療法が加わるということではなく、全人的視点でのアプローチが加わることである。脊髄損傷者のことを最も理解しようとし、脊髄損傷者の社会での活躍をイメージできるリハビリ医療従事者の協力が欠かせない。」
「ロボットを活用した脊髄損傷のリハビリテーションの現状」 村田 知之
「私自身は、ロボットがリハビリテーション場面に参入したことで、支援技術の幅とその可能性が広がったと感じている。そして、リハビリテーションの治療や自立支援に用いられる全ての機器が本人の生活をより豊かにするための1つの選択肢であることを理解し、支援に取り組まなければならないということに気づくことができたからである。」
「再生医療への期待ー脊髄損傷当事者の立場からー」 清水 正勝
「幹細胞治療はまだ始まったばかりの治療法です。細胞の種類ES細胞、体性幹細胞、iPS細胞の3種類を使った治療が試みられていますが、今後も様々なタイプの幹細胞の治療法が試みられていくと思います。損傷を受けた生体組織を多機能幹細胞を使って細胞レベルで修復していくと言うこの治療法のアイデアは将来に大きな期待が持てると思われます。」
「慢性期脊髄損傷者の歩行再建と再生医療−保険適応外トレーニング施設の取り組み−」 石河 直樹、谷野 雅紀
「再生医療を検討する段階でリハビリテーションの重要性も認識する事も大切である。脊髄損傷者からは、現在の保険制度では十分なリハビリテーションを受けることが難しく、脊髄損傷に特化したリハビリテーションを受けられる施設が少ないとのお声も聞かれる。そのため、弊社の様な脊髄損傷者に特化した保険適応外施設の必要性を再認識している。」
「脊髄損傷データベースと再生医療に向けたクリニカルパスの構築」 出田 良輔、坂井 宏旭、有地 祐人、古賀 隆一郎、村井 聖、伊福 龍世、江原 喜人、戸渡 富民宏、林 哲生、前田 健
「脊髄損傷データベースにおいて、収集されたデータを解析していくことで、さまざまな所見の仮説や検証が可能となる。脊髄再生医療における治療前後での評価体系およびリハビリテーションにおいて、標準的リハビリテーションのプロトコル(クリニカルパス)は機能回復に対するポテンシャルを最大化する効果が期待されている。」