協会誌最新号Vol.35/ No.2 (通巻118号)
特集「ものづくり新時代 −3Dプリンタの現在と未来−」
「ものづくり新時代 −3Dプリンタの現在と未来−」松田健太
これまで3Dプリンタは自動車や家電などの工業製品を開発する際に試作製作を目的として主に用いられてきましたが、いまでは工業界だけでなくさまざまな分野、施設に導入されるようになりました。本特集では、近年著しく進化してきた3Dプリンタが、リハビリテーションや医療、福祉といった実際の現場でどのように活用されているのかを知ることで、3Dプリンタを導入してみたが活用方法に悩んでいる方やこれから導入を考えている方の一助となればと考えています。
「総説 − 3D プリンタの現在と未来−」田中浩也
3D プリンタの最大の価値が、「3D データをどこまででも改良し続けられること」が理解されて欲しいと思っている。ここでは「完成品」という概念自体が不要になり、「試作品」と「最終製品」の境界もすでに存在しない。すべてが製品であり、それは同時に試作品であり、改良に改良を重ねて、ものがどこまででも進化していく。そして、ものの適合性(フィットネス)は状況に合わせて高くなっていくのだ。この特性はリハビリテーションとも関連が深いだろう。
「3D プリンタを活用した自助具製作の考え方ー技術に溺れないためにー」硯川潤
時流に乗って(?)買ってはみたものの・・・、という声も少なからず聞こえてくる。問題
の所在は様々だが、個人レベルでの取り組みに挫折組が多いようだ。考えてみれば当然で、安さの割に、使いこなしにはそれなりの専門知識が必要となる。工作機械に慣れ親しんだ企業エンジニアが3D プリンタを使いこなすのは容易だが、DIY の延長となると相当の覚悟が必要だ。
「現場で活かす3D プリンタ」一木愛子
3D プリンタは便利なものであることは間違いないが、使用から4 年が経過して思うことは、これを使えばいいものができるというわけではなく、練った構想を実現できる道具の1 つということである。我々のアイデアの基盤は対象者のニーズ、OT の動作の観察と分析、エンジニアの知識と技術であり、いいものができるための一番のヒントは、対象者の言葉にあるということを忘れてはならないと日々感じている。
「「共創」をリハビリテーションに活用する−3D プリンタを使ったインクルーシブメイカソン−」林園子
インクルーシブメイカソンは、当事者が自身の暮らしをよりよくするための「道具作り=意味のある作業」への参加を可能にするに留まらない。それは、道具との新たな関係性を構築し、道具を介したそれまでにない「活動と参加」を可能にする。そして出会った仲間と共に道具の製作プロセスとデータをオープンソースとすることにより、「世界を共創する」アクターとしての社会参加をもたらす。
「3D プリンタによる用具開発の事例」谷口公友
自費で購入した3D プリンタ(Markforged 社製ONYX ONE)を使い、電動車椅
子のジョイスティック、車いす陸上競技で使うグローブ、投てき用義手、ハンドバイクの足置きなどを試行錯誤して製作してきた。CAD などの知識も、もちろん大切であるが、それ以上に「何を作るか」を捉えることが大事であると考える。作り手が作りたいものを作るのではなく、使い手が欲しいものを創ることを常に念頭におき、私はモノ作りをしている
「装具分野における3D-Printer の実用化に向けて」須田裕紀
義肢装具の業界における3Dデジタル技術の活用は、対象者の治療・リハビリテーションに大きな効果をもたらし、医療費の軽減につながると考えられる。さらにデータ化が推進されると選定や適合に関する科学的根拠(Evidence)の構築によって学術的にも発展することが期待できる。一方で、義肢装具士の働き方改革にも貢献し、義肢装具施設にとっても有益をもたらすものと思われる。
「レーサー用グローブの製作−ユーザーの立場から−」炭谷延幸
溶かした熱可塑性樹脂を原本のグローブに加えながら、手のひら全体に衝撃が伝わる形になるように何度も何度も確認しながら変更を加えていきます。結局、形状を変えたことで握り方が変わり、キャッチにもズレがでるようになったため、最終的にはグローブ全体を修正するというように大きく方向性が変わりました。これまでであれば、また最初から作り直しとなり気持ち的にも落ち込んだと思いますが、基となるデータがあるのでいつでも過去のグローブに戻れます