協会誌Vol.29/ No.2 (通巻94号)
特集「安全に安心して使い続けるために(車椅子編)」
「特集「安全に安心して使い続けるために(車椅子編)」にあたって」 片石 任
「もし自転車がパンクしたら自分で自転車を押して自転車屋さんに行き修理代を払って直してもらう。日常当たり前とされている光景である。ところが車椅子となるとなかなかうまく流れていかないのが現実である。」
「福祉用具臨床的評価事業の概要−安全で使い勝手の良い福祉用具の開発・普及を目指して−」 矢沢 由多加
公益財団法人テクノエイド協会では、福祉用具の安全な利用を確保し事故を防止することが喫緊の課題であると考え、厚生労働省と連携して「福祉用具臨床的評価事業」を平成21 年度より実施している。
「車いす安全整備士の育成」 鈴木 寿郎
「福祉用具が流通した後、つまり消費者・利用者視点で言えば購入・レンタル後の安全性確保はどのように担保すればよいのだろうか。その答えとして導き出したものが、福祉用具流通後の安全性を担保するための人材育成である。」
「「車いす・シーティング製作技能養成コース」の取り組み」 水澤 二郎
より良い福祉用具サービスを提供するために必要な「現場における実践力」を有する人材を輩出することを意識して、コース目標を次のように設定した。
『高齢者及び障害児・者が使用する「車いす・姿勢保持装置」等の福祉用具に関する医学的・工学的専
門的知識を学ぶと共に、これら機器の製作・現場での調整・修理・改良及び各種相談等ができる実践的
技術者またはフィールドエンジニアとなりうる基本的な技術・技能を習得する。』
「養護学校での車いすメンテナンスの取り組み」 見目 茂則
車いすメンテナンスの取り組みを行っている知的障害教育部門高等部(本校)は、平成15 年に併置され、11 年を経ようとしている。
「メンテナンスの現状−製造から安心・安全の車椅子を考える−」 岡野 善記
「できるかぎり、自分の体の一部である「車椅子」を熟知して頂き、日頃のメンテナンス及び緊急整備はユーザー自身ができるようになって欲しい」
「メンテナンス現状(製造会社編)」 川上 勘太
「車椅子を利用いただく前に安全に使用するために空気圧のチェックは必要であり、空気圧が適正でないとパンクの原因に繋がります。ましてや、タイヤの空気圧が少ない状態で使用するとパンクはもちろんのこと、ブレーキのロックができなくなり、車椅子が動いたりして事故の原因にもなります。」
「メンテナンス現状(販売店編)@」 早瀬 尚文
「出張修理は、ほとんどの場合、一度訪問して現車を確認し部品を特定する必要があるため、燃料費や移動時間、冬期は積雪や視界不良、路面の凍結など運転リスクを考慮すると、不採算を承知の上で行わなければならない。」
「メンテナンス現状(販売店編)A」 本郷 正徳
「補装具の対応年数が6 年と伸びてきているにも関わらず、定期点検等の義務付けはなく、破損した状況に気付かずに使用されているケースも少なくない。」
「メンテナンス現状(販売店編)B」 北島 伸高
「車椅子は自動車と違い車検がない。補装具の場合、ご利用者の多くは故障するまで使い続け、その後連絡をいただくことがほとんどである。」
「メンテナンス現状(販売店編)C 車椅子を足とするための第一歩について少々」 大西 日出和
「是非付加して欲しいのが大車輪の脱着機能である。車載の際に便利なのは当然だが、車椅子の故障の大半を占めるパンク修理の際にとても役立つからだ。脱着機能があれば車輪だけを外して自転車屋さんやバイク屋さんに持ち込みができる。」
「メンテナンス現状(販売店編)D」 山崎 雅幸
「現在の制度上修理は部品代になっている。経営的に分析すると受注数でいうと新規65%に対して、修理は35%程度であるが、売上高でみると新規90%、修理10%となり、かなりアンバランスである。」
「障害者施設における車いす安全管理の現状と課題」 佐々木 堅
「利用者本人とその家族、そこに係わる職員が車いすの機能を理解しきれていないことを、事業者は知らな過ぎると感じます。」
「「さくら・車いすプロジェクト」が生まれるまで−パキスタンとの歴史−」 斎藤 省
「「さくら」の初まりは、2002 年そのダスキン三期生として一年近くの研修を終え帰国が近づいたパキスタンのシャフィック氏の言葉からであった。「帰国したら日本で知った自立の概念でセンターを創る、そして日本で乗ったアクティブな車いすを作る、そうすれば障がい者の現実が絶対変わる」・・そういう内容であった。・・・パキスタンの当事者達は力を合わせ大きなムーブメントを起こし始めている。
彼らが動かした制度改革は、@車いすの交付制度の成立、A中古車いすは輸入出来ない品目でしたが、その制度から外す政府発表を実現、Bパンジャブ地方の大学に通う障がい者には電動車いすが支給されるという政府発表・・・等々。」
「多機能電動車いすを安全に使うために」 西平 哲也
「どんなに高い機能の優れた電動車いすでもシーティングが使われる方に合わないときには、乗ることの出来ない車いすとなる。長年使用してきた現状の車いすのシーティングに復元出来るかが、新しい車いすに乗り換える為の最重要点となる。
病気の進行によって、変わる体の状態に合わせて、追加で機能を追加させることで最良の車いすとなる場合もある。」
「ノルウェーの車椅子メンテナンス事情」 木之瀬 隆、大場 薫
「ノルウェー社会は平等を重視しており、人権や権利を守るために障害に関係なく、補助器具やそれらにかかる費用は無料で、IT などの支援機器も含めサービスの質はすべて統一されている。」