協会誌Vol.28/ No.4 (通巻92号)
特集「難病とリハ工学」
■特集「難病とリハ工学」にあたって
西村 顕
2013年施行された「障害者総合支援法」において障害者の定義に「難病等」が追加され、必要と認められた福祉サービス等が利用できるようになった。この機会にリハ工学の分野で改めて「難病」をキーワードで特集を組んでみたいと思った。
■難病患者に対する日常生活用具・補装具制度の対応について
井村 保
「難病患者等が利用できる障害福祉サービスとしての補装具日支給制度や日常生活用具給付制度の利用申請をする際、また、その判定等の対応における留意事項を開設するとともに、今後の課題についても言及する。」
■当事者団体の立場から考える障害者総合支援法
水谷 幸司
「障害の定義と実定法における対象概念の展開の経過をふまえて、当事者団体の立場から障害者総合支援法における対象範囲拡大のもつ意味とその制度上の位置づけを確認するとともに、難病や長期慢性疾患をもつ人が障害者総合福祉法における障害福祉サービスを活用するうえで留意すべきことを述べる。」
■自治体の取り組み例@ ー横浜市における在宅生活難病者への支援ー
佐藤 史子
「難病者に対する支援について、横浜市における取組を紹介する。横浜市では、発症から社会復帰までの一貫したリハビリテーションの展開を目標に地域支援システムを構築してきた。」
■自治体の取り組み例A ー仙台市におけるコミュニケーション支援システムの構築と支援状況の報告ー
小堺 幸, 後藤 美枝, 石川 洋子, 瀬戸 ひとみ, 松浦 映理子, 後藤 貴浩, 千葉 卓
「仙台市障害者総合支援センターは、事業計画「アクションプラン」に基づいて「ALS等のコミュニケーション困難者に対して、生活障害の軽減や生活の質(QOL)の向上を図るため、意思伝等を活用したコミュニケーション確立のための支援をタイムリーに行う支援システム構築を図る」ことに取り組んできた。
■事例1(関節リウマチ:RA) ー経年変化に対応する基本的整備と福祉用具の活用ー
野口 祐子
「治療の効果や症状の変化を見越してどう整備していくのか、各ライフステージで必要とされる生活動作、さらには生活の質を維持、向上させるためのリハ工学のあり方を検討するためのひとつの題材になれたら幸いである」
■事例2(筋萎縮性側索硬化症:ALS) ーALSと共に23年ー
長尾 義明
体の異変、告知を受ける、入院、在宅に移る、後継ぎができた、絵を描き始める、リハビリとは、いろんなリハビリについて細かく紹介し、筆者の23年を振り返り、力強く「夢は捨てるものではない。死ぬまで持ち続けるものである。」とつづっている。
■事例3(パーキンソン病:PD) ー活動的な生活を継続するための軽症期からの対応ー
田治 秀彦
「パーキンソン病は緩徐に進行する疾患のため、早期から把握して、“タイムリーなアプローチ”を“継続的に行う”ことが望ましい。」事例を取り上げて紹介している。
■事例4(脊髄性筋萎縮症:SMA) ー自律(autonomy)のための電動車いすー
福島 慎吾
障害特性に合った機種選びから支給決定の流れまで詳細に報告している。また、事例を通して自律のための電動リフト機能の必要性等を述べている意見書を紹介している。
■事例5(筋ジストロフィー:PMD) ー住環境整備と福祉用具を導入したデュシャンヌ型筋ジストロフィー症の事例ー
山崎 文子
15歳男子の事例を通して、「DMDに対する住環境整備と福祉用具導入のタイミングについて検討したので報告する」
■事例6(脊髄小脳変性症:SCD) ー息子たちと車椅子ー
岩尾 健弘
車椅子の導入経緯や自宅の改築など時系列で報告し、二人の息子たちの成長と家族の絆を報告している。
■事例7(多発性硬化症:MS) ー住環境整備と福祉用具を導入したMSの事例ー
田中 桃枝
「機能低下を呈したMSの事例に対し、退院直後とその後の単身生活のそれぞれの時期において、症状の変化に合わせながら、福祉用具の導入や環境整備を実施した際のかかわりや支援のポイントについて報告する」
■自助具
長谷川 三枝子
「2010年リウマチ白書」のデータを詳細に報告し、自助具を利用する患者の声を掲載し、自助具が日常生活動作を自立へとつなげる役割が大きいことを述べている。
■スイッチ・コミュニケーション機器
日向野 和夫
スイッチ・コミュニケーション機器の必要性と種類を、整理し紹介している。導入に必要なキーパーソンの存在や生活様式・生活動作の現状維持など実用的な機器導入の事例を通して報告している。